コラムColumn
不動産を使った相続のお話し
2019年4月17日
みなさんこんにちは。
今回は久々に相続のお話しをいたします。
お金持ちの人ほど相続税に敏感です。
相続税はご自分が払うものではなく、
お子さんやお孫さんなど相続を受けた側が支払うものですが、
それでもできるだけ多くのお金を遺してあげたいと考えるのが、
親心というものでしょう。
でも相続税には累進性があり、
財産が多いほど税率が上がります。
ですからお金持ちほど相続税に敏感なのは、
ある意味で当然のことだと思います。
相続税を法律の範囲内で少なくするためにいくつかの方法がありますが、
最もよく使われるのは不動産を用いた節税法です。
例えば現金や預金は、相続時点の時価がそのまま相続税の
計算対象になりますが、不動産は少し違います。
現金や預金なら誰がみても金額は同じで、
ある人が見れば100万円だけど、別の人には200万円に
見えるなどということはあり得ません。
株や債券、投信なども同様ですね。
証券会社の口座に記載された残高は誰が見ても同じです。
では不動産はどうでしょう。
不動産は現預金や株などと違い、
物件ごとに性質も違えば周囲の環境なども異なり、
いわば千差万別です。
しかも一度売買された物件は、少なくとも数年待たなければ
市場に出てくることはありません。
ですから過去の売買相場から価値を評価することも困難です。
そのような不動産の相続時点の価値を、
いったいどのようにして評価すればよいのでしょう。
千差万別の性格を持った不動産を評価するためには、
無理やりにでも客観的な基準にあてはめて計算するしかありません。
大雑把に申し上げますと、
土地に関しては「路線価」、
建物に関しては「固定資産税の評価額」
がその客観基準です。
このような基準を政府が決めることによって、
現預金や株、債券と同様に、誰が計算しても同じ評価額に
なるようにしているわけです。
ただしこの基準には問題があります。
特に土地の評価を行う際に使う「路線価」です。
国税庁は年に一度全国の路線価を公表するのですが、
この金額は実際に売買される金額、すなわち時価と乖離があり、
特に都心部ほど低く設定される傾向がみられます。
したがって特に都心の不動産は、実際に売買される金額に比べ、
低い価格で相続税の評価が行われることになります。
どれくらい安いかといいますと、例えば東京都内の
一等地にあって賃貸に出しているワンルーム・マンションなら、
時価の1/3ほどに評価を圧縮できるイメージです。
ですから現金で相続することに比べますと、
相続税の圧縮効果は絶大です。
さらにこれを生前に贈与すれば、
大きな節税効果が生まれます。
贈与税には、年あたり110万円の基礎控除があります。
例えば以下のような時価2400万円の都心のワンルーム・マンションを、
お子様に贈与するケースで考えましょう。
- 都心の築18年、賃貸中のワンルーム・マンション
- 時価2400万円
- 相続税評価額800万円
相続税評価額と贈与税計算上の評価額は同じですので、
贈与税を計算する際の評価額も800万円になります。
さらに年あたり110万円の基礎控除がありますので、
それを踏まえたあとの贈与税額は117万円(注)と
計算できます。
注)親から子への贈与で、子が20歳以上の場合です
ではすでに持っているワンルーム・マンションを、
毎年一戸ずつ10年間お子さんに贈与してゆけばどうでしょう。
この場合、10年間に支払う贈与税の合計は1170万円になります。
- 117万円×10年=1170万円
ではワンルーム・マンション10戸分の資産を、
死亡時に一括でお子さんに現預金で遺されますと、
相続税はいくらになるでしょう。
仮にこの方がほかに1円のお金も持っていないとしますと、
2400万円×10戸=2.4憶円
の預金を遺されることになりますが、
その場合の相続税は6480万円と計算できます。
注)お話を簡単にするため、上記の例では以下の設定にしております。
- 配偶者は先に死んでいない
- 死亡時点で相続人はお子さんお一人だけ
一方で毎年一件ずつワンルーム・マンションという形で
贈与した場合、贈与税の合計は上記のように1170万円ですから、
その差は歴然です。
上記の事例は
- 不動産取得による相続税の圧縮効果
- 暦年贈与による贈与税の基礎控除の活用
という2つの効果を同時に得る節税策ですが、
実はそれ以外にも本プランには効果はあります。
例えば資産の質的な分散です。
一般に高齢者はどうしても現預金に資産を集中させてしまう
傾向にありますが、あらゆる資産には固有のリスクがあり、
金融商品としてみた現預金も例外ではありません。
上記のような不動産の取得は、節税効果に加え、
資産の質的な分散という副次的な効果もあるといえるでしょう。
二つ目の効果は安定的な収入の確保です。
もちろん親が保有しているうちは親の家賃収入になりますが、
子に贈与した後も子供サイドで家賃が発生しますので、
親子を連結で見た場合、長期にわたり安定した収入を
得ることができます。
もし親側の生活費が足りない状態になれば、
贈与のタイミングを遅らせるといいでしょうし、
場合によっては贈与せず相続してもいいでしょう。
いずれにしても、長くなる老後の生活を考えると、
不動産から得られる長期かつ安定した収入は、
金銭的な余裕とともに精神的な安定をもたらしてくれるでしょう。
上記は親一人、子一人という特異な事例で計算しましたが、
複数の子に対して暦年で贈与する場合、節税効果はさらに
高まります。
将来の相続税の支払いに不安や不満をお持ちの方は、
一度検討されてみてはいかがでしょう。
では今回はこのへんで。
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